二酸化窒素と四酸化二窒素の平衡、水との反応についてわかりやすく解説

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no2_and_n2o4 eyecatch 科学

二酸化窒素って窒素酸化物なので
人体に有害ですよね?

有害です。
呼吸器にダメージがあります。

化学式はNO2ですよね?

その通りです。
1つの窒素原子と2つの酸素原子から
できています。

本記事は二酸化窒素、四酸化二窒素の性質や用途、反応性について、基本からわかりやすく解説した記事です。この記事を読んで理解すると、二酸化窒素がどのような物質であるかを知ることができます。また、『硝酸、亜硝酸の生成反応』や『二酸化窒素と四酸化二窒素との平衡反応』を理解することができます。

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二酸化窒素の性質

化学式とモル質量

二酸化窒素の化学式はNO2で、モル質量は46.01g/molです。空気よりも重く、水に溶けやすい性質があります。融点は-9.3℃、沸点は21℃です。常温で気体もしくは液体です。圧力や温度によって、四酸化二窒素N2O4との平衡反応が変化するため、『ルシャトリエの原理』に関する実験でよく扱われます

【参考サイト】
厚生労働省 職場のあんぜんサイト
二酸化窒素の安全データシートについてはこちら

愛知県総合教育センター 理科・CSTの広場
ルシャトリエの原理の確認実験についてはこちら

大気汚染の原因物質

気体のNO2赤褐色で、人体に有毒です。大気汚染の原因物質である窒素酸化物(NOx: ノックス)の1つで、工場や自動車の排気ガスに含まれています。のどや肺などの呼吸器に対する刺激性があるため、低濃度でも長時間暴露されると、気管支炎などの症状が現れます。そのため、工場などから排出されるガスには、NO2濃度に関する環境基準が設けられています。

また、NO2は太陽光に含まれる300~700nmの光を吸収しますが、その中でも短い波長の光(およそ430nm以下)により、一酸化窒素NOと酸素原子Oに分解します。Oは、空気中の酸素O2と反応することでオゾンO3を生成します。

NO2 → NO + O
O2 + O → O3

O3光化学オキシダントの主成分で、様々な健康被害が報告されています。症状としては、目の痛み、のどの痛み、咳などがあります。一方で、大気中にオゾン層を形成することで、太陽光に含まれる有害な紫外線を吸収してくれるという良い面もあります。

【参考文献】
窒素酸化物の測定法および人の健康への影響
大気汚染研究 第7巻 第3号 1972年 p33-76
二酸化窒素の人体への影響についてはこちら

光化学オキシダントの測定法および人の健康への影響
大気汚染研究 第7巻 第3号 1972年 p77-142
光化学オキシダントの詳細についてはこちら

【参考サイト】
独立行政法人 環境再生保全機構 HP
窒素酸化物による大気汚染についてはこちら

国立研究開発法人 国立環境研究所 HP
大気中でのオゾン生成プロセスについてはこちら

硝酸、亜硝酸の原料

NO2には水に溶けやすい性質があり、水と反応すると硝酸HNO3亜硝酸HNO2が生成します。これらの酸は産業上必要な物質で、化学品の合成や処理工程で使用されています。このとき、NOが副生成物として得られます。

NO2を常温の水に溶解させると、HNO3とNOが生成します。

3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO 

また、NO2を冷水と反応させると、HNO2が生成しますが、HNO2は不安定で分解しやすく、すぐにHNO3、NO、H2Oに変化します。

2NO2 + H2O → HNO3 + HNO2
3HNO2 → HNO3 + 2NO + H2O

【参考文献】
二酸化窒素ガスの許容範囲と排気洗浄装置性能テスト」 ㈱アイデン 服部 利雄 著
金属表面技術 現場パンフレット 9巻 5号 1962年 p3-6
水に二酸化窒素を吸収させる反応についてはこちら

硝酸の工業的製法と環境対策」 米谷 正弘、関 剛康 著
化学と教育 60巻 1号 2012年 p30-33
硝酸製造における二酸化窒素の利用についてはこちら

四酸化二窒素の性質

二酸化窒素と四酸化二窒素の平衡反応

NO2は二量化することで、四酸化二窒素N2O4へと変化します。N2O4のモル質量は92.01g/molで、強い酸化性を有する気体です。

2NO2 ⇄ N2O4

NO2、N2O4ともにNの酸化数は(+IV)で、反応前後での酸化数の増減はありません。N2O4は無色なので、完全にNO2がN2O4へと変化すれば、気体の色は赤褐色から無色に変化します。NO2は窒素上に不対電子を持っているので常磁性、N2O4は不対電子を持っていないので反磁性を示します。

水との反応

NO2と同様に、N2O4が水に溶けることで、HNO3やHNO2が生成します。N2O4と常温の水の反応では、HNO3とNOが生成します。

3N2O4 +2H2O → 4HNO3 + 2NO

一方で、N2O4と冷水を反応させると、HNO3とHNO2が生成します。HNO2は不安定ですぐに分解してしまいます。

N2O4 + H2O → HNO3 + HNO2
3HNO2 → HNO3 + 2NO + H2O

用途

N2O4については、日本では昭光サイエンス㈱が製造と販売を行っており、液状酸化剤、ラジカル重合禁止剤、表面処理剤、殺滅菌剤などの用途があります。また、ロケットの推進剤としても使用されていました。

【参考サイト】
昭光サイエンス株式会社 HP
四酸化二窒素の用途についてはこちら

まとめ

ここまで、二酸化窒素NO2および四酸化二窒素N2O4の性質や反応性について、解説してきました。以下、本記事のまとめです。

二酸化窒素と四酸化二窒素の平衡、水との反応についてわかりやすく解説

【二酸化窒素NO2の性質】
赤褐色の気体または液体

大気汚染の原因物質 → 光で分解してオゾンO3を生成

水に溶けて硝酸や亜硝酸を生成
◆常温の水との反応
 3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO
◆冷水との反応
 2NO2 + H2O → HNO3 + HNO2
 3HNO2 → HNO3 + 2NO + H2O

【四酸化二窒素N2O4の性質】
無色の気体

NO2との平衡反応があり、温度や圧力によって存在比が変化
 2NO2 ⇄ N2O4

水に溶けて硝酸や亜硝酸を生成
◆常温の水との反応
 3N2O4 +2H2O → 4HNO3 + 2NO

◆冷水との反応
 N2O4 + H2O → HNO3 + HNO2
 3HNO2 → HNO3 + 2NO + H2O

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