炭酸水素ナトリウムの化学式ってNaHCO3ですよね?
その通りです
水酸化ナトリウムNaOHのように
OHが含まれてないのに、
なぜアルカリ性なんでしょうか?
炭酸水素ナトリウム自身にOH基はありませんが、
水に溶けたときにOH–を発生するからです
本記事は炭酸水素ナトリウムNaHCO3に関する記事です。
本記事を理解すると、炭酸水素ナトリウム性質を抑えることができます。また、なぜ炭酸水素ナトリウムがアルカリ性を示すのか?について、理論的に答えることができるようになります。
炭酸水素ナトリウムNaHCO3と名前が似た物質である炭酸ナトリウムNa2CO3の性質や、2つの物質の性質比較については過去に解説していますので、興味のある方は以下の記事を参照してください。
炭酸水素ナトリウムの特徴
炭酸水素ナトリウムといえば、白色の固体で、炭酸水素ナトリウムの加熱実験でよく出題されます。
2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2
炭酸水素ナトリウムを加熱すると、上記反応式のように分解して、炭酸ナトリウムと水と二酸化炭素が発生します。
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中学理科の苦手解決サイト|【さわにい】の解説
炭酸水素ナトリウムの加熱実験についてはこちら
炭酸水素ナトリウムは式量がおよそ84g/molで、常温で水100mLに約10g溶解します。重曹としても有名で、お掃除やニオイ消しに重宝します。
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くらしのマーケット
重曹の活用術についてはこちら
炭酸水素ナトリウム(重曹)は料理に使用することもできます。ベーキングパウダーの主成分であり、お菓子作りには必須の材料です。また、カルメ焼きの材料としても有名です。その他にも、医薬品や入浴剤など、用途は多岐に渡ります。
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AGC化学品カンパニー
重曹の用途についてはこちら
アルカリ性を示す物質の溶解反応
ここで、アルカリ性について考えてみましょう。アルカリ性とは、水溶液中の水酸化物イオンOH–が
水素イオンH+よりも多い状態のことです。
アルカリ性を示す物質としては、水酸化ナトリウムNaOH、水酸化カリウムKOH、アンモニアNH3、炭酸ナトリウムNa2CO3、炭酸水素ナトリウムNaHCO3などがあります。
しかし、アンモニアや炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムの化学式にはOH基が含まれていないのに、なぜOH–が発生するのでしょうか?
アンモニア、炭酸ナトリウムについては過去の記事で紹介しておりますので、気になる方は以下のリンク先を参照してください。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの溶解
強いアルカリ性を示すことで知られるNaOHやKOHには、化学式にOHが含まれています。
それぞれの化合物が水に溶けたときは、
NaOH → Na+ + OH–
KOH → K+ + OH–
というように電離し、水酸化物イオンOH–を発生します。
そのため、水溶液中のOH–が増加し、水溶液はアルカリ性を示します。
炭酸水素ナトリウムの溶解
炭酸水素ナトリウムは常温で固体です。ですので、炭酸水素ナトリウム自体をアルカリ性ということはできません。炭酸水素ナトリウムを水に溶解したときの溶液がアルカリ性を示します。アルカリ性とは水溶液の性質であることを理解しておいてください。
よって、固体の炭酸水素ナトリウムの化学式NaHCO3にOHが含まれていなくても問題ありません。
炭酸水素ナトリウムが水に溶けるときは、
NaHCO3 → Na+ + HCO3–
というように反応し、ナトリウムイオンNa+と重炭酸イオンHCO3–を発生します。
さらに重炭酸イオンが水と反応して、
HCO3– + H2O ⇄ H2CO3 + OH–
という反応が進行します。
H2CO3は炭酸で、水酸化物イオンOH–が発生します。
炭酸水素ナトリウム自体はNaOHやKOHのように水酸化物イオンOH–を放出するのではなく、水と反応することでOH–を生成します。
そのため、水溶液中のOH–が増加し、炭酸水素ナトリウム溶液はアルカリ性を示します。
まとめ
ここまで、炭酸水素ナトリウムの特徴と炭酸水素ナトリウムを水に溶解した時の反応について書いてきました。以下、本記事のまとめです。
炭酸水素ナトリウムはなぜアルカリ性を示すのか?
炭酸水素ナトリウムが水に溶けるときは、
NaHCO3 → Na+ + HCO3–
HCO3– + H2O ⇄ H2CO3 + OH–
という反応が進み、OH–を発生するので
炭酸水素ナトリウム溶液はアルカリ性を示す