アルミニウムって鉄みたいに錆びないんですか?
いえ、実はアルミニウムも錆びています。
えっ?でも、身近なアルミ製品って
ずっと錆びていないように見えますよね?
そうなんです。
そこがアルミニウムの面白いところです。
アルミニウムの性質
身近なアルミニウム

(イオンになりやすい順番に左からならべたもの)
アルミニウム(Al)はイオン化傾向が比較的大きく、反応性の高い金属です。試験管内の塩酸にアルミニウム片を入れると、水素の気泡が発生する実験は、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
ところが実際のAlは、一円玉をはじめ、屋外のサッシやアンテナ、飛行機の機体などさまざまな用途に使用されています。さらに、錆びや腐食を嫌う電子機器類にも利用されています。反応しやすいはずのAlが、なぜこれほど安定に振る舞い、さまざまな場面で活躍できるのでしょうか。
その答えは、アルミニウムの表面にできる極めて薄い膜にあります。
【参考サイト】
東洋アルミニウム株式会社 HP
身近なアルミニウムについてはこちら
今井工業株式会社 HP
アルミの特徴と幅広い用途についてはこちら
アルミニウムの酸化
アルミニウムを空気中に置くと、表面が空気中の酸素(O2)と反応し、酸化アルミニウム(Al2O3)の膜ができます。この膜の厚さはわずか数nm程度ですが、内部の金属アルミニウムを外気からほぼ完全に遮断します。
このように、金属の表面にできた酸化皮膜が、内部をそれ以上酸化させないよう保護する状態を不動態化と呼び、できた膜を不動態皮膜といいます。
この膜は、壊れてもすぐに修復します。表面に傷がついて新しい金属面が露出しても、その部分がすぐにO2と反応して新しい酸化皮膜が形成されます。そのため、アルミニウムは表面が多少傷ついても、内部まで腐食が進みにくいという特性をもっています。
アルミニウムと鉄の酸化の違い
鉄(Fe)が酸化すると赤錆(主にFe2O3やFe2O3の水和物)が生成しますが、内部の鉄は保護されません。赤錆は隙間の多い多孔質構造で、空気中の酸素や水分を通すため、金属の内部まで腐食が進行します。同じ金属でも、アルミニウムと様子が大きく異なります。これはなぜでしょうか。
この違いを説明する指標として、「Pilling-Bedworth比(PB比)」があります。PB比は、金属が酸化されたときにできる酸化物の体積が、もとの金属の体積の何倍になるかを表したものです。
$$\rm{PB\text{比} = \frac{\text{金属1イオン当たりの酸化物の体積}}{\text{金属1原子当たりの体積}}}$$
PB比が1よりも小さいと、酸化物の体積が金属より小さく、表面を覆いきれず、 隙間の多い膜になるため、保護性が低くなります。PB比が1よりも大きくなると、酸化物の体積が金属よりかなり大きくなり、被膜内部に応力がたまって割れたり剥がれたりするため、保護性が低下します。一方、PB比が1程度では、酸化物が金属表面をちょうどよく覆い、密着した緻密な膜ができるため、保護性が高くなります。
以下の参考文献によると、Al2O3のPB比は約1.28、Fe2O3のPB比は約2.14です。Alは適度な体積比をもつため、酸化皮膜が金属表面にぴったり密着した緻密な保護膜になります。一方、Feは酸化物の体積が大きく膨張するため、膜内部に圧縮応力が蓄積して剥離を繰り返します。その結果、露出した金属面から新たな酸化が進み、多孔質な錆として成長し続けます。
このように、同じ酸化皮膜でも、元の金属に対する酸化物の体積比によって、腐食の進み方には大きな違いが生じます。
【参考文献】
「金属の高温酸化(2)-酸化保護皮膜の生成」 丸山 俊夫 著
材料と環境 44巻 7号 1995年 p416-417
Pilling-Bedworth比(PB比)についてはこちら
酸とアルカリとの反応
アルミニウムの酸化皮膜は非常に優秀な保護膜ですが、万能というわけではありません。酸化アルミニウムは酸やアルカリに反応して溶解する性質をもつため、これらの環境下では酸化皮膜が失われ、アルミニウムが腐食しやすくなります。
<酸性条件>
Al2O3 + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2O
<塩基性条件>
Al2O3 + 2NaOH + 3H2O → 2Na[Al(OH)4]

