王水ってどんな酸?王水の性質や作り方について、反応式を用いて詳しく解説

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王水はとても強い酸ですよね?

金や白金を溶解するほど強い酸化力を持っています。

どうやって作るんですか?

濃塩酸と濃硝酸を体積比で3:1で混合するだけです。

本記事は王水の性質と作り方について解説した記事です。 この記事では、王水の基本的な性質なぜ強い酸化力を示すのかについて学ぶことができます。また、王水に関する反応式金、白金の錯体の生成について、理解を深めることができます。

王水の原料である塩酸と硝酸については、それぞれ以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方は、読んでみてください。

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王水の性質

王水は濃塩酸と濃硝酸の混合物で、あらゆる金属を溶解してしまうほど強い酸化力を有する液体です。王水自体はそれほど安定な物質ではないので、試薬として市販されてはおらず、必要時に濃塩酸と濃硝酸を混合して調製します。混合時には人体に有毒なガスが発生するので、ドラフトなどの換気の良い場所で作業する必要があります。

王水は多くの金属を溶解することができるので、化学分析における金属の定量分析実験器具の洗浄などで使用されています。また、パソコンやスマートフォンなどの精密機器に使用されている金を回収して再利用するために使用されています。以下のサイトでは、金の回収方法について、工程ごとに動画で解説しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

【外部サイト】
TANAKAホールディングス株式会社 HP
王水による金の回収サイクルについてはこちら

王水の作り方

濃硝酸 : 濃塩酸 = 1 : 3の体積比で混合すると、王水を作ることができます。例えば、濃硝酸100mLと濃塩酸300mLを混合すると、王水約400mLを調製できます。王水は多くの金属を溶かしますが、ガラスは溶けませんので、調製の際には耐熱ビーカーなどのガラス器具で対応することができます。

濃硝酸と濃塩酸の詳細な反応は以下のようになります。

HNO3 + 3HCl → Cl2 + NOCl + 2H2O

濃硝酸と濃塩酸が反応することにより、塩素Cl2塩化ニトロシルNOClを生成します。混合した瞬間は透明溶液ですが、時間経過により黄色に変色します。さらに時間が経過したり、熱を加えたりすると、赤橙色に変化します。

体積比で混合する理由は、市販の濃硝酸の濃度(約13mol/L)と濃塩酸の濃度(約12mol/L)に大きな差がないからです。上記反応式からわかる通り、モル比で混合する方が反応比としては正確ですが、実際に調製する場合の操作は大変です。一方で体積比で混合する場合は、容量を量りとるだけなので簡単に調製することができます。

また、生成したCl2やNOClの一部はガス化して系外に出ていくので、時間とともに酸化力が減少します。酸化力を継続して得るためには、溶液中に一部未反応の硝酸や塩酸が存在し、連続してCl2やNOClを生成している状態が好ましいと考えられます。

貴金属との反応

王水に含まれるNOClは、電気陰性度の大きな原子で構成されており、他の物質から電子を奪い取る力が強いので、非常に強い酸化剤として作用します。そのため、金Auや白金Ptなどのイオン化傾向の小さな貴金属類も溶解してしまいます。ちなみに、有機物やガラス、一部の金属類などは溶解しませんので、王水も万能な物質というわけではありません。

金 Au

金を王水に入れると、以下のように反応して溶解します。

Au + NOCl + Cl2 + HCl → H[AuCl4] + NO

H[AuCl4]はテトラクロリド金(III)酸で、水溶液中では[AuCl4] テトラクロリド金(III)酸イオンとして存在しています。王水により、Au(0)からAu(III)まで酸化されていることがわかります。

【参考文献】
王水で金箔を溶かす」 東京都立神代高等学校 主幹教諭 高木 春光 著
化学と教育 62巻 4号 (2014年)
王水で金を溶かす実験についてはこちら

白金 Pt

白金は王水に入れると、以下のように反応して溶解します。

Pt + 2NOCl + Cl2 + 2HCl → H2[PtCl6] + 2NO

H2[PtCl6]はヘキサクロリド白金(IV)酸で、水溶液中では[PtCl6]2- ヘキサクロリド白金(IV)酸イオンとして存在しています。王水により、Pt(0)からPt(IV)まで酸化されていることがわかります。

【参考文献】
燃料電池のリサイクル法の確立」 東京工業高等専門学校 城石 英伸 著
環境省 HP (H22年度 環境研究総合推進費 終了成果報告集)
王水で白金を溶かす実験についてはこちら

逆王水の性質

王水の類似物質で、逆王水という物質が存在します。王水では濃硝酸: 濃塩酸 = 1 : 3(体積比)で混合するのに対し、逆王水では濃硝酸: 濃塩酸 = 3 : 1(体積比)で混合して調製します。濃硝酸の割合が多くなるので、酸化力を補うことができます。

例えば、有機物に含まれる金を溶解したい場合を考えてみます。金自体は王水に溶解しますが、有機物は王水には溶解しません。そこで、有機物が濃硝酸で加熱分解できることを利用して、試料を逆王水で加熱分解することで、有機物中の金を完全に溶解することができます。

このように、王水を使用する際、濃硝酸の性質を強く反映させたい場合に、逆王水を使用することがあります。

まとめ

ここまで、王水の基本的な性質や調製方法、貴金属類との反応などについて書いてきました。以下、本記事のまとめです。

王水ってどんな酸?王水の性質や作り方について、反応式を用いて詳しく解説!

【王水の性質】
濃硝酸と濃塩酸の混合溶液で、非常に酸化力が強くあらゆる金属を溶解することができる
 
金Auとの反応
Au + NOCl + Cl2 + HCl → H[AuCl4] + NO
白金Ptとの反応
Pt + 2NOCl + Cl2 + 2HCl → H2[PtCl6]+ 2NO

【王水の作り方】
市販の濃硝酸と濃塩酸を体積比で1:3で混合して調製する
調製時には有毒ガスが発生するので、換気の良い場所で作業を行う

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