酢酸ナトリウムのpHの求め方がわかりません
酢酸の平衡反応と考え方は同じです
酢酸と酢酸ナトリウムって違うのでは?
物質そのものや性質については異なりますが、
pH計算については似た部分もあります
実際に例題で理解しましょう
酢酸ナトリウムのpHを求めるためには、酢酸の平衡反応を理解しておくと、理解が早いです。酢酸の平衡反応については、以下の記事で解説していますので、参照してください。
【内部リンク】
酢酸のpHを計算できますか?についてはこちら
本記事には以下のことが書かれています。
①酢酸ナトリウムのpH計算方法
②酢酸ナトリウムの平衡反応式
③酢酸ナトリウムの平衡定数の取り扱い
本記事は以下のお悩みを持つ方にオススメです。
・酢酸ナトリウムって弱酸?弱アルカリ?
・酢酸ナトリウムの平衡反応ってどうなるの?
・酢酸ナトリウムと酢酸って違うの?
本記事を理解して実践すると、酢酸ナトリウムのpHを簡単に計算できるようになります。また、平衡反応の仕組みが理解できるので、酢酸ナトリウム以外の塩でも応用できます。
酢酸ナトリウム溶液の平衡反応
酢酸ナトリウムの平衡反応式と平衡定数Kbは以下に示す通りです。
酢酸ナトリウムの平衡反応式
$$\rm{CH_3COONa → CH_3COO^− + Na^+}$$
$$\rm{CH_3COO^- + H_2O ⇄ CH_3COOH + OH^-}$$
酢酸ナトリウムの平衡定数Kb
$$\rm{K_b = \frac{[CH_3COOH][OH^-]}{[CH_3COO^-]}}$$
酢酸ナトリウムの化学式はCH3COONaです。水に溶けると、酢酸イオンCH3COO–とナトリウムイオンNa+に完全に解離します。
生成した酢酸イオンCH3COO–は水H2Oと反応して、酢酸CH3COOHと水酸化物イオンOH–を生成します。酢酸イオンが液中に増えると、酢酸に戻る反応が進行します。
酢酸ナトリウムCH3COONaは酢酸CH3COOHとは異なり、水中で解離してもヒドロニウムイオンH3O+はできません。代わりに水酸化物イオンOH–を生成するため、溶液はアルカリ性を示します。
例題① 0.10mol/Lの酢酸ナトリウム溶液のpH計算方法
【例題】
0.10mol/Lの酢酸ナトリウム溶液のpHを有効数字2桁で計算せよ。
ただし、酢酸の平衡定数 Ka = 1.8×10-5、水のイオン積 Kw = 1.0×10-14とする。
【解答】
CH3COONa → CH3COO− + Na+
CH3COO– + H2O ⇄ CH3COOH + OH–・・・①
Kb = [CH3COOH][OH–]/[CH3COO–]・・・②
Ka×Kb=Kwより、
Kb = Kw/Ka = (1.0×10-14)/(1.8×10-5) ≅ 5.56×10-10・・・③
[OH–] = Bとすると、①より、
[CH3COOH] ≅ [OH–] = B・・・④
[CH3COO–] ≅ 0,10-B・・・⑤
よって、②~⑤より、
Kb = B2/(0.10-B) = 5.56×10-10
ここで、Bは0.10と比較して非常に小さい値なので、
以下のような近似ができる。
[CH3COO–] = 0.10-B ≅ 0.10
よって、
B2/0.10 = 5.56×10-10
両辺に0.10をかけて、
B2 = 5.56×10-11
B = 0.00000745…
pH = 14-pOH = 14+logB = 8.87… ≅ 8.9
例題② 0.010mol/Lの酢酸ナトリウム溶液のpH計算方法
【例題】
0.010mol/Lの酢酸ナトリウム溶液のpHを有効数字2桁で計算せよ。
ただし、酢酸の平衡定数 Ka = 1.8×10-5、水のイオン積 Kw = 1.0×10-14とする。
【解答】
CH3COONa → CH3COO− + Na+
CH3COO– + H2O ⇄ CH3COOH + OH–・・・①
Kb = [CH3COOH][OH–]/[CH3COO–]・・・②
Ka×Kb=Kwより、
Kb = Kw/Ka = (1.0×10-14)/(1.8×10-5) ≅ 5.56×10-10・・・③
[OH–] = Bとすると、①より、
[CH3COOH] ≅ [OH–] = B・・・④
[CH3COO–] ≅ 0,10-B・・・⑤
よって、②~⑤より、
Kb = B2/(0.010-B) = 5.56×10-10
ここで、Bは0.010と比較して非常に小さい値なので、
以下のような近似ができる。
[CH3COO–] = 0.010-B ≅ 0.010
よって、
B2/0.010 = 5.56×10-10
両辺に0.010をかけて、
B2 = 5.56×10-12
B = 0.00000235…
pH = 14-pOH = 14+logB = 8.37… ≅ 8.4
補足「濃度の近似計算」
例題①、②における[CH3COO–]の近似について、酢酸ナトリウム溶液の濃度が大きいときは、近似しても真の濃度との誤差は小さくなります。一方で、酢酸溶液の濃度が小さくなると、真の濃度との誤差が大きくなります。
より正確なpHを求めるときには、近似せずに直接二次方程式を解く方法があります。近似をしない方法については、以下で説明しています。
例題① 0.10mol/Lの酢酸ナトリウム溶液のpH計算方法(近似なし)
上記例題①の途中式より、
Kb = B2/(0.10-B) = 5.56×10-10
B2=5.56×10-11-5.56×10-10B
B2+5.56×10-10B-5.56×10-11=0
これを解いて、B=0.00000745…
pH = 14-pOH = 14+logB = 8.87… ≅ 8.9
近似ありなしでの誤差は0.0038%
例題② 0.010mol/Lの酢酸ナトリウム溶液のpH計算方法(近似なし)
上記例題②の途中式より、
Kb = B2/(0.010-B) = 5.56×10-10
B2=5.56×10-12-5.56×10-10B
B2+5.56×10-10B-5.56×10-12=0
これを解いて、B=0.00000235…
pH = 14-pOH = 14+logB = 8.37… ≅ 8.4
近似ありなしでの誤差は0.011%
酢酸ナトリウム溶液のpH計算方法のまとめ
ここまで、酢酸ナトリウム溶液のpH計算方法について、詳しく書いてきました。以下、本記事のまとめです。
酢酸ナトリウムの平衡反応
CH3COONa → CH3COO– + Na+ (完全に解離)
CH3COO– + H2O ⇄ CH3COOH + OH–
酢酸ナトリウムの平衡定数
Kb = [CH3COOH][OH–]/[CH3COO–]
例題① 0.10mol/Lの酢酸ナトリウム溶液のpH計算方法
例題② 0.010mol/Lの酢酸ナトリウム溶液のpH計算方法
【考え方】
[OH–]の濃度をBとし、[CH3COO–]と[CH3COOH]の濃度を
Bで表し、平衡定数Kbの式に代入
補足「濃度の近似計算」
酢酸ナトリウム溶液の濃度が非常に小さいときは、
近似すると誤差が大きくなるので注意
コメント